新潟県弁護士会

声明・意見書

2021年12月21日|声明・意見書

精神障害を理由とする強制入院制度を改革し,共生社会の実現を求める会長声明

1 強制入院制度のもたらす人権侵害
  精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)
 は,精神障害のある人を対象とし,期間制限のない強制入院制度を設けている。
  強制入院により,閉鎖病棟や隔離室の中に閉じこめられ,時には身体拘束によ
 り身動きすら取れない状態に置かれ,屈辱感や自己喪失感とともに深刻なトラウ
 マを植え付けられた患者は少なくない。数十年もの長期間にわたり社会から隔絶
 され,精神科病院で一生を終える患者もいる。
  強制入院制度は,憲法第13条が保障する個人の尊厳を深く傷つけるとともに,
 地域で教育を受け,働き,家族を持つなど,生活のありとあらゆる場面で,人生
 選択の機会と発展可能性・自己実現の可能性を大きく損なわせ,隔離による人生
 被害を生じさせるなど,重大な人権侵害につながるものである。
  日本弁護士連合会第63回人権擁護大会第1分科会では,「精神障害のある人
 の尊厳の確立をめざして~地域生活の実現と弁護士の役割~」をテーマにシンポ
 ジウムを開催し,入院経験者に対するアンケートを実施したが,「入院によって
 人生が変わってしまった。」「人として扱われなかった。」など赤裸々な回答が
 多数寄せられ,入院患者が様々な人権侵害を受けている実態が明らかにされた。
  また,医療従事者に広範な権限を付与する強制入院制度は,患者と医療従事者
 との間に閉鎖的で構造的な権力関係を生み出し,医療従事者による劣悪な処遇や
 虐待等を生み出す温床ともなりかねない。新潟県内でも精神科病院内での虐待事
 件が告発された歴史があるが,近年も,神戸市の精神科病院で凄惨な虐待事件等
 が発覚するなど,虐待等による人権侵害が繰り返されている。
2 強制入院制度に関する国際的な動向と日本の精神科医療の特異性
  日本も批准する障害者の権利に関する条約第14条第1項は,「いかなる場合
 においても自由の剥奪が障害の存在によって正当化されないこと」と規定してお
 り,国連障害者権利委員会による同条に関するガイドライン等においても,強制
 入院制度が同条約の趣旨に反することが明らかにされている。
  EU諸国では,2018年時点の在院患者数に占める強制入院の割合は10%
 台となり,国際的には強制入院制度廃止に向けた動きが一層強まっている。
  ところが,日本では,在院患者数に占める強制入院の割合は46.8%と著し
 く高く,国際的な動向から大きく遅れている。
  そもそも,日本の精神科医療制度は,1960年以降,地域移行・脱施設化を
 進める世界の潮流に反して病床数を増大させ,世界の精神病床の4分の1が日本
 にあるとも言われている。2016年の人口10万人あたりの精神病床は263
 床で,OECD加盟国の平均である69床の4倍以上である。精神病床の平均在 
 院日数も,2017年は267.7日であり,OECD加盟国の平均36.7日
 の約7倍と突出して長く,また,同年統計では,日本の入院患者27.8万人の
 うち,5年以上の長期入院が9.1万人(約33%),10年以上の長期入院が
 5.4万人(約19%)となっている。この27.8万人のうち,「受け入れ条
 件が整えば退院可能」とされる「社会的入院」は5万人に上る。 
  このように日本は,精神病床数,精神科入院者数,入院期間の長さ,そして社
 会的入院の多さが世界で突出し,異常ともいえる事態となっている。
3 目指すべき社会像と医療制度
  国は,地域共生社会の実現を掲げているところ,強制入院制度により精神障害
 のある人を排除して隔離する社会は,共生社会とはいえない。
  近年,諸外国においては,対話を重視することにより入院を回避することは可
 能であるとの考えの下,ACT(包括型地域生活支援サービス。多職種の専門家
 チームが,地域で暮らす精神障害者に支援を提供するサービス。),オープンダ
 イアローグ(急性期を含めた精神疾患の患者に対し,危機に即座に専門職や家族
 等の関係者が集まって,本人と共に開かれた対話を繰り返して治療するフィンラ
 ンドの試み。)等の実践により入院を回避するための取組がなされ,日本におい
 てもこれらの実践が試みられている。
  本来,医療は,本人のためのものである。一般医療と等しく,精神科医療にお
 けるインフォームド・コンセントを確立し,このような実践の普及等により,精
 神科医療へのアクセスを十分に確保し,精神障害のある人に対し,患者の権利を
 中心とした医療法による最善の医療が提供されなければならない。
4 当会は,精神障害のある人の尊厳の確立をめざし,精神科病院に入院する人の
 権利保障,地域生活移行に向けた支援に尽力することを決意するとともに,国に
 対し,精神保健福祉法の強制入院制度を廃止し,精神科医療をその他の医療一般
 と共に医療法に等しく包括させるための法改正を行うこと,国と地方公共団体に
 対し,真の共生社会の実現に向けて,精神障害のある人が,地域において,その
 尊厳を保ちながら安心して生活することができるよう,地域資源の創出等の必要
 かつ実効的な施策やそれにあたり必要な予算措置を講じることを求める。

                    2021年12月20日       
                     新潟県弁護士会
                     会長 若  槻  良  宏

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