投資・副業・国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件の依頼にあたってのご注意
近年、SNSを利用した詐欺が全国的に急増しています。
相手方が被害者とSNSで複数回やりとりを重ねて信頼関係を築き、被害者に親近感や恋
愛感情を抱かせて、その感情を利用して「将来のため」等の理由で投資を持ち掛け、様々
な名目で金銭の支払いをさせて、最終的に相手や投資サイトと連絡が取れなくなり出資金
が回収できなくなるという、いわゆる国際ロマンス詐欺の被害が急増しています。
このほかにも、投資話や副業話を持ちかけ、最初は期待した通りの金員を支払い信用させ
つつ、その後、違約金や手数料などと色々と理由をつけては、金員をだまし取るという類
型の手口も急増しています。
このような詐欺には、以下のような理由から、被害回復が困難という特徴があります。
①SNSでやりとりをした人とお金を振り込んだ口座の名義人が別人であるため、口座名
義人から詐欺をした人にたどり着くことができない。
②SNSの運営会社に対して、自分がSNSでやりとりをした人物が誰かということを問
い合わせても突き止めることが容易でない。
③SNSでやりとりをした人物を突き止めることができたとしても、海外在住であるなどの
理由から、被害回復のための手段をとることが容易でない。
④お金を振り込んだ口座を差し押さえることができても既に出金されていて回収できなかっ
たり、仮にお金が残っていても他にも差し押さえた人がいたら、その人たちにも分配しなけ
ればならない。
このような詐欺案件を取り扱うとするウェブ上の弁護士業務広告の中には、以下のとおり、
弁護士法、弁護士職務基本規程(以下、「基本規程」といいます。)、または弁護士の業務
広告に関する規程(以下、「広告規程」といいます。)に違反するおそれのあるものが散見
されます。
・ 架空の事例を取扱事例として表示している(事実に合致していない広告・広告規程第3条
1号)
・ 弁護士が一人しかいないのに、24時間365日相談対応と表示している(事実に合致してい
ない広告・広告規程第3条第1項)
・ これから取り扱おうとする案件であるにもかかわらず、「専門分野」、「専門弁護士」、
「国際ロマンス詐欺に特化した弁護士」などと表示している(誤導または誤認のおそれのある
広告・広告規程第3条第2号)
・ 現実に十分な回収ができるケースが少数であるにもかかわらず、取扱事例として、「被害
金額1300万円で1100万円回収」、「被害金額500万円で400万円回収」、「被害金額300万円
全額回収」といった他の詐欺事案で高額回収ができた事例をあたかも国際ロマンス詐欺事案で
回収したもののように表示し、その例と同じような結果をもたらすと思わせるような表現をし
ている(事実に合致していない広告・広告規程第3条第1項、誤導または誤認のおそれのある広
告・広告規程第3条第2号)
・ 弁護士が「LINEで相談」と表示しているにもかかわらず、実際には事務職員がLINEのメッ
セージを作成していて、弁護士が直接対応していない(事務職員等の指導監督・基本規程第19
条、非弁提携・弁護士法第27条)
・ 弁護士が自ら広告を出しているにもかかわらず、広告に表示された電話番号に電話をかけ
ると、登録事務所以外の事務所に繋がり、そこに常駐する事務職員が「○○弁護士相談室です。
」などと応対して相談を受ける(複数事務所・弁護士法第20条第3項、非弁提携・弁護士法第2
7条、事務職員等の指導監督・基本規程第19条)
最近、関東弁護士会連合会の各弁護士会の市民相談窓口において、投資や副業、国際ロマン
ス詐欺に代表される詐欺案件に関する相談が数多く寄せられていることが報告されております。
相談の一例としては、以下のとおりです。
・詐欺被害に気づき、深夜にあわてて弁護士に委任し、電子契約を締結し、着手金を支払った
が、冷静に考えてみると高額に過ぎる
・委任契約後、間もなく解約を申し入れたが、口座凍結手続や内容証明郵便の発送等に着手し
たと言われ、ほとんど返金を受けられなかった
・弁護士に高額の着手金を支払ったものの、直接弁護士とやりとりをすることはなく、事務員
が対応するのみで進展がない
詐欺被害に気づき、慌てて検索した法律事務所のホームページ上で、あたかも回収可能性が
高いことを謳った広告をみれば、藁をもすがるおもいで、その広告を掲載している弁護士に相
談をされることと思います。
しかし、弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、
処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければなりません(日本弁
護士連合会の弁護士職務基本規程29条1項)。また、弁護士は、依頼者の期待する結果が得ら
れる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはなりませ
ん(同条3項)。
そのため、投資や副業、国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件の被害に遭われ、被害の回
復を弁護士に依頼する方は、依頼する予定の弁護士から、事件処理の進め方、被害回復の可能
性を含めた見通し、これらを踏まえた着手金・報酬金の妥当性について十分な説明を受けた上
で依頼の検討をいただくよう、お願いいたします。
特に、深夜など冷静な判断が難しい状況で相談をして、すぐに電子契約のうえ弁護士に依頼
することを勧められた場合には、一旦冷静になってお考えいただくことを、強くおすすめします。
なお、このお知らせは、東京弁護士会が公開している情報を参考にさせていただき掲載しています。
以 上
<参考条文>
弁護士法
(法律事務所)
第二十条 弁護士の事務所は、法律事務所と称する。
二 法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない。
三 弁護士は、いかなる名義をもつてしても、二箇以上の法律事務所を設けることができない。但し、
他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない。
(非弁護士との提携の禁止)
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又は
これらの者に自己の名義を利用させてはならない。
日弁連 弁護士職務基本規程
(事務職員等の指導監督)
第十九条
弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若し
くは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用する
ことのないように指導及び監督をしなければならない。
日弁連 弁護士の業務広告に関する規程
(禁止される広告)
第三条
弁護士等は、次に掲げる広告をすることができない。
一 事実に合致していない広告
二 誤導又は誤認のおそれのある広告
三 誇大又は過度な期待を抱かせる広告
※ 【参考】日本弁護士連合会サイト↓(同様の注意喚起情報のご案内)
日本弁護士連合会:弁護士に相談・依頼をするみなさまへ (nichibenren.or.jp)