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お知らせ

ストリートビューに関する会長声明

 本年8月5日から、Google(グーグル)社は、「Street View(ストリートビュー。以下、「SV」という)」機能サービスの
提供を開始した。
 これは、東京、大阪などの都市や淡路島など地方の地域について、インターネット画面上にある地図の道路上の任意の地点(以下、「指定点」という)
にカーソル当てクリックすると、その指定点においてグーグル社が撮影専用の自転車や自動車で移動しながら撮影した360度のパノラマ静止画像が
見える機能である。
 撮影対象は、主要道路に限らず、住宅街の狭い道路をも対象とした広範囲の画像が撮影・公表されている。その画像には、撮影されていることを全く
意識しない多数の市民が写っており、中には、ラブホテルに入る寸前のカップル、路上でキスをする学生等も含まれていた。
 SVには正面の顔画像はぼかしがかかっているものが多いものの、撮影場所が明確に特定できるため、撮影対象者を知る人には、対象者の特定が可能である。
また、ぼかしがかかっていない人の顔画像も散見されるほか、カメラの位置が歩行者の視点よりも高いため、歩行者の視線であれば塀や垣根などの障害物に
よって遮られて見えないはずの民家の中を見ることができる画像も見受けられる。
 グーグル社は、①公道から撮影したものであれば基本的に公開してかまわない、②不適切な画像についてはユーザーからの連絡を受けて削除することで
対応する、と説明している。
 しかし、わが国においては、公道での様子であっても、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を
撮影されない自由(プライバシー権の一種である肖像権)を有する(最判1969年12月24日,京都府学連事件判決、東京地判2005年9月27日等)。
 SVは、撮影の場面において、①都市のほぼ全域にわたる広範かつ無限定の多数の市民の肖像を根こそぎ撮影していること、②高い位置からの撮影のため、
撮影対象が家屋内にも及んでいること、③事前に、公表目的での撮影を行うことを説明していないこと、また、公表の場面において、④プライバシー保護の
観点から看過できない問題画像を事前に個別チェックしていないこと、⑤グーグル社のホームページ自体が強力な伝播力を有する媒体で、不適切画像が世界中の
極めて多数のユーザーの目にさらされること、⑥テレビニュースの背景画像等のように一時的に映像が流れるのとは異なり、長期間に亘って継続的に画像情報が
提供され続けるため、撮影場所が常に容易に特定できること、⑦電子データの特性上、問題画像が半永久的に第三者により2次利用されうること、などから、
プライバシー権侵害の危険性は高いというべきである。
 SVについては、遠隔地の画像が簡単に見られるという便益をもたらすという側面を強調する立場もあるものの、それがSVの画像の中に登場する多数の
市民にプライバシー権侵害の受忍を強いてもやむを得ないといえるまでの優越的価値が認められるとは考えられない。
 ユーザーの申告を受けてから不適切画像を削除する仕組みについては、全ての被撮影者が不適切画像に気づく保障はなく、また、不適切画像が削除されたとしても
既にユーザーに取り込まれた同画像の2次利用による被害があり得るし、そもそも事後的削除では最初からプライバシー権の侵害がなかったことにはならない。
 また,この削除システム自体については、複数の操作が必要であるだけでなく,そもそも電話がつながりにくい等、削除システムが未整備というべきあって、
事後的救済装置としても不完全というべきである。
 グーグル社は、以上指摘した問題点が存在することに鑑み、少なくとも、①撮影用カメラ位置を人の目線まで下げること,②撮影に当たっては周辺住民に対する
事前告知を行なうこと,③不適切画像削除の仕組みを周知するとともに,④被害者ユーザーの電話等による不適切画像削除の申し入れについて迅速且つ的確に対応し
得る体制を構築する等して、SVによる個人のプライバシー侵害及びその可能性をなくする措置を可及的速やかに講ずるべきである。
 以上の措置が十分に講じられていない現状では、グーグル社は、このような人権侵害の可能性の高いサービスの提供をひとまず中止すべきである。

                                        2008年(平成20年)12月24日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 髙 野 泰 夫  


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