国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明
国選弁護制度とは、被疑者及び被告人が、経済的な理由等で自ら弁護人を選任できない場合に、国の費用によって裁判所が弁護人を選任する制度である。
同制度は公正な刑事手続を受けるうえで重要な制度であり、被疑者及び被告人の基本的人権の尊重及び権利擁護のために国選弁護人活動の充実は必要不可欠
である。また、近年では、9割近い被疑者が捜査段階において国選弁護人を選任し、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名される等その
堅調な利用が確認された。
しかし、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用は長年にわたって低い水準のままである。国選弁護事件の平均的な報酬は、事務所経営を維持しながら
適正な弁護活動を行うために必要な対価としては非常に低額な状態が続いている。新潟県の調査によれば、新潟市内の消費者物価指数は2020年を基準と
しても10%程度上昇しているものの、国選弁護人の報酬等にはその事情も反映されていない。
また、新潟県は県土が南北に広いうえ、佐渡島のような離島もある中で、直近では上越警察署が女性留置施設を閉場する等遠隔地の移動を余儀なくされる
事態も想定されるものの、国選弁護人の交通費は一部のみが賄われるにとどまる。冬季は災害級の豪雪の中接見をすることもあるがその負担に見合った
費用の支出は予定されていない。
さらに、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、多くの弁護活動の費用が賄われていない。数々の冤罪事件でも弁護側の科学的鑑定が
無罪主張の柱となっており、当事者鑑定も極めて重要な弁護活動のひとつである。
そのような中で、当会もこれまで、国選弁護及び刑事弁護活動の重要性に鑑み、遠隔地移動費用、記録謄写に関する費用、当事者鑑定に関する費用、冤罪
防止のための刑事弁護費用、罪に問われた障がい者等の刑事弁護費用等の各種支援・援助事業に取り組んできているが、弁護士会の自助努力だけでは限界
がある。そもそもこれらの費用については、各単位会や弁護士個人の負担によるものであってはならず、被疑者及び被告人が国選弁護制度を利用している
限りにおいて、全て国の負担によるべきものである。
国の費用で賄われることを前提に、これを支える確固とした予算措置の議論が必要不可欠であり、現行の国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用が
極めて不十分であることの抜本的な解決も図られるべきである。にもかかわらず、国選弁護業務のための予算は、国家予算全体に対して僅か0.013%程度
と極めて僅少な額で推移し、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。国選弁護、当番弁護士登録者の減少傾向も現行の報酬水準が要因
であることも否定できない。
よって、当会は、被疑者及び被告人の更なる権利擁護と公正な刑事手続実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護
費用の抜本的改善を求める。
2026年(令和8年)7月23日
新潟県弁護士会
会長 大 田 陸 介