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お知らせ

労働者の生活を守り,地域経済を発展させるために最低賃金の引上げ及び中小企業支援の更なる強化並びに全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明

新潟地方最低賃金審議会は,近いうちに,中央最低賃金審議会の厚生労働大臣への答申を踏まえ,本県の最低賃金改定額を新潟労働局長に答申する。昨年,同審議会は,本県の最低賃金を時給803円から27円引上げ時給830円とすべきと答申し,その結果,2019年10月6日以降の新潟県の最低賃金は,時給803円から時給830円に引き上げられた。しかし,時給830円という水準は,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収約14万4000円,年収約173万円にしかならない。
 今般,政府の緊急事態宣言により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産,廃業に追い込まれる懸念も広がる中,最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきという議論もある。
 しかし,労働者の生活を守り,新型コロナウイルス感染症に向き合いながら地域経済を維持・発展させていくためにも,最低賃金引上げを後退させてはならない。多くの非正規雇用労働者をはじめとする最低賃金付近の低賃金労働を強いられている労働者は,日々生活するだけで精一杯で,緊急事態に対応するための十分な貯蓄をすることができていない。今般の緊急事態宣言による経済活動の停滞に伴いすぐに多くの労働者が日々の生活を維持できなくなったのは,低賃金労働者は政府が用意する救済施策を受けるまでの短期間すら生活の糧とできるだけの貯蓄ができない状況におかれていたからである。また,今般の緊急事態下において,小売店の店員,運送配達員,福祉・介護サービス従事者等の社会全体のライフラインを支える労働者の中には,最低賃金付近の低賃金で働く労働者が多数存在する。これらの労働者の労働に報い,その生活を支え,社会全体のライフラインを維持していくためにも最低賃金の引上げは必要である。
 一方,最低賃金の引上げによって経営に影響を受ける中小企業に対しては,新型コロナウイルス感染拡大に備えた支援策が拡充されているところであるが,政府は,今後も長期的継続的に中小企業支援策を一層強化していくべきであり,最低賃金の引上げが困難な中小企業のための社会保険料の減免や減税,補助金支給等の支援策の検討・導入を進めるべきである。また,中小企業の生産性を向上させるための施策を有機的に組み合わせることも必要である。
 さらに,最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも看過できない重大な問題である。2019年の最低賃金は,最も高い東京都で時給1013円であるのに対し,最も低い15県は時給790円であり,223円もの開きがあった。最低賃金の高低と人口の転入出に相関関係があることは否定できず,最低賃金の低い地方の経済が停滞し,地域間の格差が固定,拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し,地域に労働力を確保することは,地域経済の維持・発展のみならず,都市部の一局集中から来る様々なリスクを分散するうえでも有用といえる。
なお,日本弁護士連合会は,2020年2月20日付で「全国一律最低賃金の実施を求める意見書」を発表したところであるが,政府においても早急に,全国一律最低賃金制度の実現に向けた検討を開始すべきである。
 よって,当会は,新潟地方最低賃金審議会に対し,新潟県の地域別最低賃金を大幅に引き上げる旨の決定をするよう求める。
以上のような最低賃金の大幅な引上げにより,地域経済の健全な発展を促すとともに,労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。

2020年(令和2年)7月8日

新潟県弁護士会
会長 水内 基成


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