最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明
中央最低賃金審議会は,昨年7月25日,2018年度地域別最低賃金額改定の目安について,最低賃金額を全国平均で26円引き上げるべきとの答申を行った。その結果,2018年10月1日以降の新潟県の最低賃金は,時給778円から時給803円に引き上げられた。
しかしながら,時給803円という水準であると,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収約12万8600円,年収約154万円にしかならない。新潟県は,他の都道府県と比較して,公共交通機関網の整備が必ずしも十分とはいえず,通勤のための自動車保有の必要性が都市部よりも高く,世帯当たりの自動車関連費用は年間約30万円となっている。また,冬期の暖房費は,統計によれば月約2万円に達する。これらの地域特性を加味すると,現行の最低賃金額での生活維持は困難である。
また,803円という新潟県の地域別最低賃金額が,全国平均(874円)に及んでいないことも大きな問題である。また,東京都(985円)や神奈川県(983円)等の都市部と比較すると,約180円の差がある。地方では,その賃金の低さから,より賃金の高い就職先を求めて都市部に移らざるを得ない例が多く,地方での労働力不足が叫ばれている。地方経済の活性化のためにも,最低賃金の地域間格差を是正する必要性が高い。最低賃金の大幅な引上げにより,特に中小企業の経営に影響を与えることが懸念されるものの,当該影響については,企業に対する補助金制度の拡充等の措置を検討すべきである。
日本弁護士連合会は,最低賃金につき,2020年までに全国加重平均1000円にすることを求める会長声明を発している。この目標を達成するためには,1年あたり50円の引上げが必要であるものの,昨年の中央最低賃金審議会の答申は,これに満たなかった。
なお,仮に時給1000円となった場合であっても,1日8時間,週40時間働いた場合の年収は約192万円であるが,この金額で最低限の生活を営むのは困難であり,独身者においては結婚すること自体を躊躇することが容易に想定される。そのため,過酷なダブルワーク等を行わざるを得ず,健康状態の悪化につながる事態も懸念される。
よって,当会は,時給1000円という水準であってもなお不十分であることに留意したうえで,新潟地方最低賃金審議会に対し,新潟県の地域別最低賃金を50円以上引き上げる旨の決定をするよう求める。
以上のような最低賃金の大幅な引上げにより,地域経済の健全な発展を促すとともに,労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。
2019年(令和元年)6月11日
新潟県弁護士会
会 長 齋 藤 裕