取調べの全事件全過程可視化実現を求める会長声明
本日、被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けを内容とする改正刑事訴訟法が施行された。
法律による取調べの録音・録画の義務付けは、当会も含めた各弁護士会、各弁護士会連合会、日本弁護士連合会、研究者及びえん罪被害者やその支援者等といった市民の粘り強い運動により実現したものであり、えん罪防止に向けた重要な歩みとして極めて意義深いものである。
当会としては、弁護士である会員に対し、制度についての周知徹底を行うとともに、例外事由が拡大解釈され、録音・録画義務の範囲が不当に限定される不適正な事案が生じた場合には、警察及び検察庁に対する申入れなどにより是正を図るなど、同制度の趣旨に沿った運用がなされていくよう努めていく。
他方、今回の法改正により取調べの録音・録画が義務化されたのは、身体拘束下の、裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件の被疑者取調べのみである。対象事件が限定的である上、身体拘束を受けていない場合のいわゆる在宅取調べは含まれておらず、不十分な点があると言わざるを得ない。
取調べの適正化及びえん罪防止という取調べの録音・録画の趣旨に鑑みるとき、取調べの録音・録画は、全ての事件に拡大されるべきである。
この点を受け、衆議院法務委員会では、改正刑事訴訟法の採決にあたり、「検察官及び検察事務官並びに司法警察職員は、取調べ等の録音・録画に係る記録媒体が供述が任意になされたものかどうか判断するための最も重要な証拠となりうること及び取調べ等の録音・録画が取調べの適正な実施に資することに鑑み、刑事訴訟法第301条の2第4項の規定により被疑者の供述及びその状況を記録しておかなければならない場合以外の場合(被疑者以外の者の取調べに係る場合を含む。)であっても、取調べ等の録音・録画を、・・・できる限り行うように努めること」との附帯決議をした。当会は、この附帯決議の趣旨に鑑み、今回の法改正により録音・録画が義務付けられた事件以外の事件についても、取調べの録音・録画がなされるとの運用を実現するよう、会員とともに実践を積み重ねていく。
さらに、当会は、改正法附則9条2項に定める施行後3年見直しに向け、取調べに関する運用についてのデータを蓄積し、積極的な情報発信により取調べ可視化についての社会的な理解を得るよう努め、法制度上も、全ての事件における取調べ全過程の録音・録画の義務付けがなされるよう全力を尽くすことを、ここに表明するものである。
2019年(令和元年)6月1日
新潟県弁護士会
会長 齋 藤 裕