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お知らせ

生活保護基準の引下げに反対する声明

「冬場,暖房代を節約するために昼間はファンヒーターをつけないで厚着をして布団にくるまって寒さをしのいでいる」
「親戚や近所づきあいをすると何かとお金がかかるので,つきあいを避けるようになっている。」
「外出するとお金を使う機会が増えるため,一日中家に閉じこもってすごすようにしている。」
 当会の貧困問題対策委員会所属委員が2017(平成29)年12月下旬に新潟市居住の複数の生活保護利用者より
聴取した生活保護利用者の実態である。

 このような状況であるにも関わらず,政府は,2017(平成29)年12月22日,2018(平成30)年度から,
生活扶助基準や母子加算をさらに引き下げることを公表した。
 2018(平成30)年10月から段階的に減額し,生活扶助費の減額幅は最大で5%,母子加算の減額幅は
平均2割となり,およそ67%もの世帯が減額となる。

 しかしながら,2004(平成16)年からの老齢加算の段階的廃止,2013(平成25)年からの生活扶助基準の削減,
2015(平成27)年からの住宅扶助基準・冬季加算の削減と立て続けに削減が続いている状態であり,その結果,
保護受給者が現在においても既に困窮しているのは冒頭で述べたとおりである。今回,再度の引下げが実施されれば,
生活保護利用者の生活がさらに逼迫し,「健康で文化的な最低限度の生活」の実現が一層遠のくことは明らかである。

 受給額の削減根拠として,所得が低い方から10%以内の低所得者世帯における消費水準との比較均衡が主張される。
しかしながら,我が国における生活保護の捕捉率は20%から30%程度と推測されており,現在比較対象とされている
低所得者層の中には生活保護基準未満の収入しかない世帯が多く含まれおり,そのような世帯は消費水準を抑制せざるを
得ないのである。それにも関わらず,現在のように低所得者層との比較均衡を削減根拠に掲げることを継続するなら,
生活扶助基準が際限なく下がり続ける事態を招くことになり,かような事態が不合理であることは明白である。

 また,生活保護基準は,国民生活の最低水準を画する指標とされるため,最低賃金,住民税非課税基準,就学援助などの
多種多様な低所得者に対する救済政策と連動していることから,生活保護基準の引下げは,生活保護利用者の生存権を侵害
すると同時に,生活保護を利用していない低所得者層にも多大な影響を及ぼすものである。

 憲法25条は,すべての国民に対し,生存権を保障し,国に対して社会福祉,社会保障の向上増進に努める責務を
課しているのであって,現在においても「健康で文化的な最低限度の生活」を実現できていない生活保護利用者がいる状況下で,
さらなる削減を実施しようとする政府の姿勢を容認することはできない。

 当会は,憲法25条の精神に反し生活保護利用者の「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のさらなる侵害となり,
生活保護を利用していない低所得者等にも多大なる影響を及ぼす今回の生活保護基準の引き下げに強く反対する。

                                        2018年(平成30年)1月30日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 兒 玉 武 雄  


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