「特定秘密の保護に関する法律」の施行に反対し、改めて同法の廃止を求める会長声明
来たる本年12月10日、特定秘密の保護に関する法律(以下「特定秘密保護法」という。)が施行される予定である。情報保全諮問会議が
作成した同法施行令(案)及び運用基準(案)について実施されたパブリックコメントに全国から2万3820件もの意見が寄せられたにも
かかわらず、内容はほとんど変わらないまま施行日を含む施行令、運用が閣議決定された。
当会は、昨年9月24日付けで「特定秘密の保護に関する法律案に反対する会長声明」を公表し、また、本年2月28日には、特定秘密保護法を
施行することなく直ちに廃止するよう求める総会決議を行い同法の廃止を求めた。これらの中で指摘した以下の同法の問題点は、依然として何ら解消されていない。
① 別表及び運用基準を総合しても、秘密指定できる情報は極めて広範であり、恣意的な特定秘密指定の危険が解消されていない。
② 特定秘密を最終的に公開するための確実な法制度がなく、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性がある。
③ 政府の恣意的な秘密指定を防ぐためには、すべての特定秘密にアクセスすることができ、人事、権限、財政の面で秘密指定行政機関から
完全に独立した公正な第三者機関が必要であるにもかかわらず、同法が規定している独立公文書管理監等の制度にはこのような権限と独立性が欠けている。
④ 過失による秘密の漏えい行為が処罰され、取得行為では教唆、共謀、煽動が独立して処罰されるなど処罰範囲が広く、かつ、これらに対し重い罰則が科されている
ことから、国民の情報収集活動に過度の萎縮効果をもたらし、国民の知る権利を侵害する危険性が高い。
⑤ 適正評価制度は、情報保全のために必要やむを得ないものとしての検討が十分になされておらず、評価対象者やその家族等のプライバシーを侵害する可能性があり、
また、評価対象者の事前同意が一般的抽象的であるために、実際の制度運用では、医療従事者等に守秘義務を侵させ、評価対象者との信頼関係を著しく
損なうおそれがある。
⑥ 刑事裁判において、証拠開示命令がなされれば秘密指定は解除されることが明らかにされたものの、証拠開示命令は裁判所の判断に委ねられており、特定秘密を被告人、
弁護人に確実に提供する仕組みとなっていない。被告人、弁護人が秘密を知ることなく公判手続が強行される可能性が大きく、適正手続が十分に保障されない
可能性が大きい。
政府は、国民の不安に応え、国民の知る権利と民主主義を危機に陥れかねない秘密保護法を直ちに廃止し、国際的な水準に沿った情報公開と秘密保全のためのバランスの
取れた制度構築のための国民的議論を進めるべきである。
当会は、関係団体と協力し、依然として重大な問題が存在する特定秘密保護法の廃止を引き続き求めていく決意である。
2014年(平成26年)11月25日
新潟県弁護士会
会長 小泉 一樹