「東日本大震災に係るインタ-ネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請」の撤回を求める会長声明
2011年(平成23年)4月6日,総務省総合通信基盤局長は,社団法人電気通信事業者協会等4団体に対し,「東日本大震災に係る
インタ-ネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請」を発した。
本要請は,「東日本大震災後,地震等に関する不確かな情報等,国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が,電子掲示板への書き込み等により
流布しており,被災地等における混乱を助長することが懸念されます」との認識を明らかにした上,電気通信事業者等において法令や公序良俗に
反すると判断するものの自主的削除等を要請している。
現在,インターネット上には,原子力発電所の事故に関して政府等による発表内容を批判し,危険性を強調するウェブサイト等が多く存在する。
そして,そのようなウェブサイト等を閲覧することにより不安を感じる国民が多く存在することも事実であろう。しかし,国民は,政府等による
発表内容も含め様々な情報を提供される中で,初めて事態を総合評価し,適切な判断・行動を取ることができる。国民にはかかる情報を受領する権利,
すなわち知る権利が認められるのである。よって,個人の権利等を違法に侵害するような場合を除き,原子力発電所の危険性を強調するウェブサイト等
には社会的意義があると考えられる。
しかるに,本要請は,具体的な例示を行うこともなく「地震等に関する不確かな情報等,国民の不安をいたずらにあおる流言飛語」と述べ,公序良俗等に
反する文書の自主的削除等を要請している。流言飛語,公序良俗といった広範な解釈の余地のある判断基準を設ける本要請は,原子力発電所の事故等に
ついて危険性を強調する社会的意義のあるウェブサイト等を個人の権利等の侵害の有無を問わず対象としていると受けとられかねず,国民の適切な
判断・行動の機会を奪い,知る権利を侵害しかねない。
そもそも,国及び関係機関等において,東日本大震災に関連する情報につき迅速かつ適切な情報公開を実施することが何よりも肝要である。必要にして
十分な情報公開がなされることにより国民に対して適切な情報の取捨選択の機会が与えられるならば,国民の不安をいたずらにあおるような流言飛語は
自然と淘汰され,被災地等における混乱を助長することもない。
よって,当会としては,本要請の撤回を求める。
2011年(平成23年)4月12日
新潟県弁護士会
会長 砂 田 徹 也