001/202212/logo.png@alt

お知らせ

少年に対する死刑確定に関する会長談話

 最高裁判所は、1994年(平成6年)秋、大阪、愛知、岐阜の3府県で少年らのグループによって計4人の若者を死亡させた、いわゆる
連続リンチ殺傷事件の被告人ら3人の死刑判決に対する上告について、3月11日、上告を棄却する判決を下した。
 1983年(昭和58年)7月8日のいわゆる永山最高裁判決以降、犯行当時少年に対する死刑判決が確定しているのは2人だけであるところ、
この度の上告棄却により、犯行当時少年であった被告人ら3人に対する死刑判決が確定することになる。
 死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降、国連人権委員会
(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に
対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。また、
2008年10月には国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対し、「政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、
必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」との勧告をしている。
 また、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時、死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上
執行していない事実上の廃止国を含む。)であったのに対し、現在は、死刑存置国58か国、死刑廃止国139か国(前同)となっており、
死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
 とりわけ、少年については、死刑については、子どもの権利条約は18歳未満の子どもに対する死刑を禁止しており、少年法も第51条で
「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。」として、罪を犯した当時18歳未満の
少年に対しては死刑を科さないとしている。これは、18歳未満で重大な事件を起こした少年の場合、成育過程においていくつものハンディを
抱えていることが多く、精神的に未成熟であることから、あらためて成長と更生の機会を与え、自らの行為の重大性に向き合わせようとする
趣旨である。本裁判における少年は犯行当時18歳であったが、これらの法の趣旨は、犯行当時18歳の少年に対する判決においても
尊重されるべきである。
 このような状況の下で、最高裁判所が犯行時少年であった被告人3人に対し、少年事件の特性に何ら考慮を払うこともなく、死刑判決を
確定させたことは誠に遺憾であるといわねばならない。
 当会は、2009年(平成21年)5月20日の定期総会決議において、「生命の尊厳」を尊重しなければならないという立場から、
「裁判員裁判施行にあたり多数決による死刑評決に反対し、死刑制度の見直しを求める」決議を採択し、2010年(平成22年)8月11日、
「死刑執行に関する会長声明」において、裁判員裁判制度のあり方も踏まえながら死刑制度に対する国内外からの問題点の指摘を真摯に受け止め、
死刑廃止を含めた死刑制度に関する国民的議論を行うことを求め、同年12月10日、「裁判員裁判における死刑判決についての会長談話」において、
裁判員裁判において少年に対して死刑判決を下すことの問題点を指摘してきたところである。本判決を契機として、改めて、政府に対し、
死刑確定者に対する処遇の実態や死刑執行方法などの情報を、今後裁判員となりうる国民一般に広く公開し、死刑制度の存廃を含む在り方に
ついて国民的議論を行うよう、改めて求めるものである。

                                        2011年(平成23年)3月22日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 遠 藤 達 雄  


ページトップへ

page top