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お知らせ

足利事件に関する会長声明―あらためて、取調べ全過程の録音録画を直ちに実施するよう求める

 またひとつ冤罪事件が明らかとなった。今月4日、いわゆる足利事件の再審請求人である菅家利和氏が無期懲役刑から解放された。DNA再鑑定
の結果、検察側が無罪の蓋然性が高い旨の意見書を提出し、刑の執行停止がなされたものである。
 しかし、菅家氏が、無実の罪で17年間もの間身柄を拘束され、自由と人生を奪われ続けた事実は消し去ることはできない。
 解放後の記者会見で、菅家氏は、
「逮捕後の調べで自白してしまったのは、刑事たちの責めがものすごかったから。『おまえがやったんだ。』、『早く話して楽になれ。』と言われ、
否定しても全然受け付けてもらえませんでした。」、
「別の2件の女児殺害事件を認めたのも、刑事に無理やり体を揺さぶられて『おまえがやったのは分かっている。』と言われたから。髪を
引っ張られたり、足で蹴飛ばされたりもし、どうにもならなくなって『やりました。』と言ってしまいました。」
と話している。
 典型的な、密室での取調べによる虚偽自白の奪取である。そして、虚偽の自白調書が作成され、裁判ではそれが任意性・信用性のある自白として扱われ、
精度の低いDNA鑑定とともに有罪認定の決定的な証拠とされた。その結果、無実の菅家氏が殺人犯の汚名を着せられ、無期懲役刑を言い渡されたのである。
 足利事件について、最高検察庁次長検事、警察庁長官が、相次いで、「真犯人と思われない人を起訴し服役させたことに対し、大変申し訳なく思っている。」、
「二度とこういうことがないようにしなければならない。」と謝罪したと報道されている。
 もし、その謝罪が真摯なものであるならば、検察・警察は直ちに取調べ過程の全面可視化に踏み切るべきである。
 「全部を録音録画すると、被疑者が萎縮して真実を話しにくくなる。」などという言い訳はもはや通用しないし、国民の納得を得られるものではない。
 最近でも、志布志事件、布川事件、氷見事件など、密室での取調べによる虚偽の自白に依拠した冤罪事件が相次いで明らかにされた。
 このような冤罪の発生は、絶対に避けなければならない。
 新潟県弁護士会は、平成20年2月29日の総会において取調べ過程の全面可視化を求める決議を行い、その早期実現に向けた取り組みを鋭意
行ってきたところであるが、あらためて、捜査機関に対して、直ちに取調べの全過程の録音録画を実施するよう求めるとともに、その即時実現を図るために
必要にして十分な活動を実施していく決意を新たにするものである。

                                        2009年(平成21年)6月16日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 和 田 光 弘  


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