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お知らせ

選択的夫婦別姓制度の導入を求める総会決議

 当会は、国会及び政府に対し、民法第750条を速やかに改正し、選択的夫婦別姓制度を速やかに導入することを求める。

                      決議の理由

第1 はじめに
   当会は、2021年9月28日付で「選択的夫婦別姓の導入を求める会長声明」を発出した。
  同声明は、2021年6月23日の最高裁判所大法廷判決において選択的夫婦別姓制度が「国会で論ぜられ,判断されるべき事柄」と
  されたことを受け、①婚姻前の氏を維持することは個人の重要な人格的利益に関わるものであること、②国際法の観点から早急な是正が
  必要であること、③国民の期待が高まっていることを理由に、同制度の速やかな導入を求めたものである。
   しかし、その後、国会での具体的な議論は進展せず、同制度の導入に向けた動きは加速していない。むしろ、昨今の政治情勢を背景に、
  通称使用の拡大を通じた現状維持を支持する意見もみられる。本声明は、こうした状況を踏まえ、同制度の導入を改めて強く求めるものである。

第2 民法第750条は違憲であること
   民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦同姓を義務づけている。
   これは、夫婦が同姓にならなければ婚姻できないことを意味する点で、憲法13条が自己決定権として保障する「婚姻の自由」を侵害し、婚姻に
  際して夫婦の一方に姓の変更を強いる点で、同条が人格権の一内容として保障する「氏名の変更を強制されない自由」を不当に侵害するものである。
   また、同姓・別姓いずれの夫婦となるかは個人の生き方に関わる問題であるところ、現行法上は、夫婦別姓を選択する限り法的な婚姻関係を結べず
  その法的効果を享受できないという差別的取扱いを受けることになり、法の下の平等を定めた憲法14条に反する。
   さらに、憲法第24条は、第1項で「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有する」と定め、第2項で「法律は、
  個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」として婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等を定めているところ、
  民法第750条は、婚姻に「両性の合意」以外の要件を加重して夫婦の自律的な意思決定を不当に制約するとともに、婚姻時に改姓している者の
  約95%は女性であるという実態に照らすと、事実上性別による不平等を生じさせるものであり、憲法24条に反する。

第3 社会的背景と世論の状況
   近年、社会全体で多様性の確保や女性活躍推進が叫ばれる中、選択的夫婦別姓制度を求める世論が高まっている。官民の各種調査において
  選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が増え、多くの地方議会で同制度を求める意見書が採択されている。経済団体からも、
  現行制度が個人の活躍を妨げ、不利益をもたらしているとして、同様の要望が出されている。

第4 通称使用の拡大が問題の解決にならないこと
   婚姻によって改姓を強いられた多くの女性が、アイデンティティの喪失感などの精神的苦痛やキャリア上の不利益を被っている。
  このような改姓による不利益を緩和するため、近年、旧姓の通称使用を認める場面が広がりつつある。
   しかし、通称使用は、対症療法的で便宜的な措置に過ぎず、第2で指摘した憲法上の課題を本質的に解消するものではない。旧姓を本来の
  姓としてではなく通称としてしか使用できないこと自体が精神的苦痛を伴い、個人の尊厳を傷つけている。また、実質的にも、通称使用には
  運用基準や手続などの統一的ルールがなく、契約や手続の相手方の対応如何によって戸籍姓と旧姓の使い分けを余儀なくされ、通称使用の際に
  証明書の取得や提出など手続的負担が付加されるなど、未だに多くの煩雑さや取引リスクなどの不利益がある。そして、これらの苦痛や不利益が
  主に女性に押しつけられているという不平等な状況は依然として残ったままであり、問題の根本的な解決にはほど遠い状況にある。

第5 子ども相互間の姓の定め方について
   複数の子どもがいる場合の子ども相互間の姓の統一の必要性について議論が必要だとして、選択的夫婦別姓制度の導入を先送りすべきだ
  という意見がある。
   しかし、家族の多様性が尊重される現代において、すべての家庭で一律に子どもの姓を統一させる必要はない。現在でも、事実婚や
  離婚後の家庭、国際結婚の家庭など、親子間や兄弟姉妹間で姓が異なる家族は少なくない。現代の社会が求めるものは、家族の多様性を尊重し、
  父母が互いの人格の尊重及び協力関係のもとで適切に子を養育できるように必要な施策を充実させることである。子ども相互間の姓を
  統一すべきかどうかは、父母が子らの最善の利益の確保を念頭に協議して決すべき事項に他ならず、選択的夫婦別姓制度の導入を
  先送りする理由となるものではない。

第6 結語
   以上の次第により、当会は、国会及び政府に対し、民法第750条を速やかに改正し、選択的夫婦別姓制度を導入するよう改めて強く求める。


                          2025年(令和7年)2月18日
                            新潟県弁護士会臨時総会


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