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お知らせ

議員立法による第217回国会での再審法改正の実現を求める会長声明

 えん罪は国家による極めて甚大な人権侵害であり、えん罪被害者の救済のためには、立法府たる国会議員の議員立法による
再審法改正を速やかに行う必要がある。 
 2024年3月11日、超党派の国会議員による「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(以下「同議連」という。)が
発足し、2025年1月28日、同議連は、今国会(第217回国会)で、議員立法として、刑事再審に関する刑事訴訟法の一部を改正する
法律案(以下「再審法改正案」という。)を提出し、今国会での成立を目指す方針であることを明らかにした(2025年5月1日現在の同議連の
加入者は386名)。今回、再審法改正議連が今国会に提出した再審法改正案は、①再審請求審における証拠の開示命令、②再審開始決定に
対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定の整備を内容とするもの
であり、いずれも必要性や緊急性の高い改正内容である。
 この超党派の国会議員による再審法改正議連発足は、過去幾多の再審無罪事件、とりわけ2024年10月9日に再審無罪判決が確定したいわゆる
袴田事件の影響が大きいと思われる。袴田事件は、1966年6月、静岡県清水市(現静岡市清水区)で、放火され全焼した住宅内でみそ製造販売
会社専務の一家4人がいずれも多数回刃物で刺突された遺体で発見された強盗殺人、現住建造物放火事件であるが、当時同会社の従業員であった
袴田巌さん(以下「袴田さん」という。)が犯人として逮捕、起訴され、その後、静岡地方裁判所は袴田さんに死刑判決を言い渡し、
1980年11月19日、最高裁判所でこの死刑判決は確定した。その後、袴田さんは、死刑執行の恐怖の中、47年以上にわたる身柄を拘束され続けた。
そして、袴田さんの無罪が確定したのは逮捕から実に58年後のことであった。
 今回の再審法改正議連の議員立法による再審法改正案は、この袴田事件をはじめとするこれまで幾多の再審無罪事件に対する国民全体の痛切な
反省の結実とも言うべきものである。
 一方、法務省は、2025年2月7日、再審制度の見直しについて法制審議会に諮問を行う旨を表明し、これを受け、同4月21日、法制審議会の
部会での審議が始まった。しかし、法務省・検察庁はこれまで一貫して、再審法改正に極めて消極的な態度を示してきた。袴田事件の再審公判でも
袴田さんに改めて死刑を求刑し、無罪判決後も、袴田事件の異常ともいうべき長期化について検察官の対応には問題がなかったなどと述べている。
このような法務省が主導する法制審議会において、証拠開示や検察官抗告の禁止など必要な改正が速やかになされるとは考えがたい。
 当会は、袴田事件や再審法改正について、これまで「刑事訴訟法の再審に関する規定の速やかな改正を求める総会決議」(2023年8月25日)、
「刑事訴訟法の再審規定(再審法)の速やかな改正を求める声明」(関弁連理事長及び関弁連管内13の弁護士会長による連名。2024年9月26日)、
「袴田事件の控訴断念を受けて、改めて速やかな再審法の改正を求める会長談話」(2024年10月8日)を発してきたものであるが、
議員立法による再審法改正の機運が高まる中、改めて、今国会における速やかな再審法改正の実現を強く求めるものである。

                                               2025年(令和7年)6月11日
                                                 新潟県弁護士会
                                                                                                                         会長 今 井 慶 貴
                                    


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