001/202212/logo.png@alt

お知らせ

日本学術会議推薦候補者の会員任命拒否に抗議する会長声明

1 菅義偉内閣総理大臣は、本年10月1日、日本学術会議が新会員として推薦した候補者105人のうち6人の研究者の任命を拒否しました。その理由について、政府は「総合的・俯瞰的活動を確保する観点から」などと説明するにとどまり、具体的な理由を明らかにしていません。
2 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立ち、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし(日本学術会議法前文)、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的として、わが国の科学者の内外に対する代表機関として設立されました(同法第2条)。
3 このような使命及び目的の下、日本学術会議は、科学に関する重要事項を審議し、科学に関する研究の連絡を図り能率を向上させるとともに(同法3条)、政府からの諮問に対して答申し、あるいは自ら勧告を出すなどして政府に対して科学に関する政策提言等を行う役割を課せられていますが(同法第4条、第5条)、これらの職務は、政府から「独立して行う」とされています(同法第3条)。このような同会議の独立性は、上記使命を果たし目的を遂行する上で必要不可欠であるだけでなく、戦前戦中の国家による学問思想統制に対する深い反省に根ざしたものであって、強く保障されなければなりません。
4 そのため、日本学術会議は、国の特別の機関として、内閣総理大臣の所轄ではありながら、組織や運営における自主性・自律性が保障されており(同法第3章以下)、会員の選出においても、同会議が自主的に選考した候補者を内閣総理大臣に推薦し(同法17条)、会員はその「推薦に基づいて」内閣総理大臣が任命するとされています(同法7条2項)。
この任命は、同会議により選考、推薦された会員に対して形式的な発令行為としての任命を行うにすぎないと解釈されてきました。かかる解釈は、会員の選出方法が科学者による公選制から推薦制に改められた1983年(昭和58年)の同法改正時に、故中曽根康弘総理大臣(当時)が「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と答弁したのを始めとして、国会審議において何度となく確認されたものであり、内閣法制局も、上記解釈自体について変更はないと明言しています。
5 そうであるにも関わらず、今般、菅義偉内閣総理大臣は、何ら具体的な説明をすることもなく日本学術会議の推薦した候補者の任命を拒否したもので、これは、明らかに同法に違反する行為です。このような行為は、人事を通じて科学者の代表機関である同会議の独立性や自主性・自律性を損なうものであり、ひいては研究者の学問の自由や思想表現の自由の抑圧につながりかねず、憲法23条が保障する学問の自由に対する重大な脅威となるものです。当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、これを看過することはできません。
6 よって、当会は、内閣総理大臣に対し、今回の任命拒否に強く抗議し、任命拒否の対象となった6人の研究者を速やかに日本学術会議の会員に任命することを求めます。

2020年(令和2年)10月27日
新潟県弁護士会
会 長  水 内 基 成


ページトップへ

page top