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お知らせ

18歳及び19歳の者の取扱いに関する法制審議会の要綱(骨子)に従った 少年法改正に反対する会長声明

1 法制審議会(以下「法制審」と言います。)の少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「部会」と言います。)では、これまで少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることの是非及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇策に関する議論が進められてきました。
当会は平成27年6月11日に「少年法の『成人』年齢引き下げに反対する会長声明」を、平成29年10月10日に「少年法の適用年齢引下げに改めて反対する会長声明」を、平成31年1月29日には「少年法の適用年齢引下げに再度反対する会長声明」をそれぞれ発出し、そもそも少年犯罪は増加も凶悪化もしていないこと、現行の少年法制を改正する必要性は乏しいこと、少年法の適用年齢引下げには多くの問題点があること等の理由から、適用年齢の引下げには反対の立場であることを表明してきました。
2 本年10月29日、法制審は、部会の取りまとめに基づく少年法改正の要綱(骨子)を内容とする答申案を決定し、上川陽子法務大臣に法改正を答申しました。要綱(骨子)では、18歳及び19歳の者が罪を犯した場合、まずは家庭裁判所に送致し、家庭裁判所調査官の調査や少年鑑別所の鑑別を実施した上で、施設収容処分や保護観察処分等を行うこととし、家庭裁判所が刑事処分を相当と認めたときは検察官送致するといった現行少年法に近い枠組みが提案されており、20歳以上の者とは異なる取扱いをすべきであるとした点については評価できます。
しかし、この要綱(骨子)では、以下の点について問題があると考えています。
(1)18歳及び19歳の者の位置づけについて
   要綱(骨子)では、そもそも18歳及び19歳の者を少年法の適用対象として位置づけるかどうかについては、「今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である」として、結論を出していません。
   しかし、要綱(骨子)では、未成熟で可塑性の高い18歳及び19歳の者に対し、その立ち直りのためにきめ細やかな調査・処分を行うといった現行少年法に近い枠組みが取られていることに照らすと、18歳及び19歳の者に対する新たな法整備を行うのではなく、これらの者を従来どおり明確に少年法の適用対象に含めることとすべきです。
(2)いわゆる原則逆送の範囲について
現行少年法では、検察官送致決定をしなければならないいわゆる原則逆送の範囲について、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」重大な生命侵害事案に限定していますが(少年法20条2項)、要綱(骨子)では、18歳及び19歳の者に対してはこれに加え、短期1年以上の新自由刑(現行の懲役及び禁錮を単一化した新たな自由刑として創設が検討されている刑、以下同じ。)に当たる罪の事件も原則逆送の対象とすることが提案されています。
短期1年以上の新自由刑に該当する罪としては、強盗、強制性交等罪等が挙げられるところ、これらは犯情の幅が極めて広い事件類型であり、これらの罪名に当たるというだけで原則逆送をされてしまうというのでは、家裁裁判所において諸事情を考慮した上で立ち直りに向けた処分をきめ細かく行う現行少年法の趣旨が没却されてしまうため、到底受け入れることはできません。
(3)推知報道について
   要綱(骨子)では、18歳又は19歳のとき罪を犯した者については、当該罪によって公判請求された場合には、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載しても良いとされています。
  しかし、少年法が少年の推知報道を年齢、事件の別なく一律禁止している(第61条)のは、少年は未成熟な部分が多く傷つきやすく、可塑性が高いにもかかわらず、推知報道がされることで、少年の名誉・プライバシーが侵害され、少年の就労等の社会復帰や更生を極めて困難にしてしまうためです。この趣旨は、公判請求された18歳及び19歳の者についても妥当し、現在においてもなお維持されるべきです。推知報道は、少年法の目的である少年の健全な育成(第1条)にも重大な支障を及ぼすもので、到底認めることはできません。
(4)ぐ犯について
   要綱(骨子)では、18歳及び19歳の者のぐ犯(特定の事由があって、その性格又は環境に照らして将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある場合)については、家庭裁判所送致の対象範囲外とされています。
しかし、少年法は、未成熟な少年を保護し、健全育成を促す役割も担っているところ、18歳及び19歳の者のぐ犯事案を家庭裁判所送致の対象から外してしまうことにより、未成熟であるが故に反社会的集団に引き込まれるおそれがあるケースについて、保護の手を差し伸べることができなくなってしまうため、到底認めることはできません。
3 以上の点に照らし、当会は、法制審の要綱(骨子)には反対する旨を表明するとともに、法務省に対し、今後の立法化作業において、上記各事項について要綱(骨子)に従った立法化を行わないこと、18歳及び19歳の者を現行法のとおり明確に少年法の保護の対象とすることを強く求めます。
  
2020年(令和2年)11月16日
新潟県弁護士会
会長 水 内 基 成


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