新潟県内公立学校において子どもの教育を受ける権利を踏まえた休業日 決定を行うこと等を求める会長声明
政府は2月28日、各教育委員会に対し、新型コロナウイルス感染防止のため、3月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう要請した。それを受け、県内の各教育委員会は、要請に沿い、3月2日あるいはそれに近い日から春休みまでの休校を決定したところである。
新型コロナウイルス感染防止は極めて重要である。
他方、公教育は、憲法26条1項の教育を受ける権利を保障するものであり、休校の判断は慎重になされなければならない。
しかし、2月29日に行われた安倍総理大臣の記者会見でも、休校判断を裏付ける医学的知見は示されなかった。3月2日の参議院予算委員会において、安倍総理大臣は、休校の判断にあたり直接専門家の意見を聞いたものではないと答弁している。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の公表文書中でも全国一斉休校の必要性は示されていない。Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019でも、学校での感染事例はあげられていないし、〝infected children have largely been identified through contact tracing in households of adults〟とされているところであり、学校での感染の危険性は指摘されていないところである。
言うまでもなく、学校保健安全法20条は、感染症予防のための休校については学校設置者が決定するものとしており、最終的には各教育委員会が新型コロナウイルス感染防止対策としての休校日を決定しうるところである。
よって、各教育委員会は、新型コロナウイルスについての知見の推移、県内における感染状況などを踏まえ、それぞれの管轄地域において感染防止のための休校の必要性が高くないと判断される場合には、政府の要請と異なる方向となるとしても、春休み前の授業再開あるいは春休みにおける授業実施を決定すべきである。
また、政府は、各教育委員会が独自に適切な判断を行いうるよう、速やかに学校生活における新型コロナウイルス感染の危険性を裏付ける情報の提供を行っていただきたい。
以上
2020年3月3日
新潟県弁護士会
会長 齋 藤 裕