新型インフルエンザ等対策特別措置法改定を受けての会長談話
本日、新型インフルエンザ等対策特別措置法改定法案が参議院委員会で可決され、同法において新型コロナウイルス感染症を対象としうることが明確化されることが確実となった。
当会は、2020年3月6日に公表した「新型インフルエンザ等対策特別措置法制定についての会長声明」において、新型インフルエンザ等対策特別措置法45条は、特定都道府県知事において学校等施設管理者に対し利用停止等を指示等できるとしているところ、学校等の利用停止等は教育を受ける権利等重要な権利と抵触しかねないので、最低限利用停止等の指示等をするについては医師等の専門家の意見聴取を義務付けるべきこと、後世によるチェックを可能とするために指示をするとの判断プロセスの記録保存などを求めた。しかし、本日成立する改定法においても、この点の義務付けはなされていない。
新潟県知事が特定都道府県知事として学校等施設管理者に対し利用程度等を指示する場合には、新潟県新型インフルエンザ等対策行動計画に従って判断を行うと思われる。しかし、同行動計画においても、例えば、「県内感染期」において、「新型インフルエンザ対策専門委員会」の開催は必要的ではなく、新型インフルエンザ等対策特別措置法45条による指示についても専門家の意見聴取は必要とされていない。45条による指示が、県民生活に重大な支障を及ぼすことからすると、極力慎重な判断がされるべきであり、45条による指示を行うについては新型インフルエンザ対策専門委員会ないし他の医学等専門家の意見聴取を必ず行うこととすべきである。
また、指示についての判断プロセスを後世から検証できるようにするため、判断プロセスについての記録保存を行うべきである。
さらに、新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象となることが明記されたことにより、感染者の行動履歴等の開示も新潟県新型インフルエンザ等対策行動計画に従ってなされることになると考えられる。しかるに、同行動計画においては、「提供する情報の内容については、個人情報の保護と公益性に十分配慮して伝えることが重要である」(16頁)という程度の抽象的な記載しかない。この点、当会が本年2月25日の「新型コロナウイルス感染者の行動履歴開示の是非について早急かつ慎重な検討を求める会長声明」において明らかとしたとおり、新潟県個人情報保護条例の趣旨を踏まえ、開示範囲は、個人が特定され得ない範囲、あるいは不特定の濃厚接触者に周知を図る必要があるため開示について個人の生命等を守るため緊急かつやむを得ない必要性があると考えられる範囲内にとどめるべきである。新潟県において、今後、感染者の行動履歴を開示する場合においては、感染者の個人情報等に配慮し、新潟県個人情報保護条例の趣旨を踏まえていただきたい。
以上については、新潟県新型インフルエンザ等対策行動計画に盛り込むべきであるし、最低限運用上配慮がなされるべきである。 以上
2020年3月13日
新潟県弁護士会
会長 齋 藤 裕