「谷間世代」に対する早急な一律給付を求める会長声明
1 司法修習は,司法試験に合格した者に対し,経験豊富な実務法曹の指導によって,法律実務
に即した教育を行い,実務の場で必要な知識,技法を身に付けさせるための制度であり,国民
の権利に直接関係する法曹はプロフェッショナルとして高い倫理観と職業意識が求められるた
め,この実務修習は法曹を養成するために不可欠の課程です。そこで,司法修習生は国家公務
員に準じた身分にあるものとして取り扱われ,兼業・兼職が禁止され,修習に専念する義務(修
習専念義務)や守秘義務等を負うこととされており,これまで長年にわたり,国家公務員に準じ
た給与支給(いわゆる給費制)が採用されてきました。
2 しかし,2011年から2016年までの6年間,国の財政的理由から給費制は廃止され,
この期間の司法修習生は無給で司法修習を受けざるを得ないこととなり(いわゆる「谷問世代
」),修習期間中の生活費を最高裁判所が貸与する制度(いわゆる貸与制)も導入されました。
兼業・兼職が禁止されている以上,司法修習生は,経済的な不安を抱えながら,無給で1年間
の司法修習を行うことを強いられ,その1年間の生活費を賄うために一人当たり平均約300
万円の貸与を受けたとも言われています。このように経済的負担を負った状態で法曹としての
スタートラインに立ち,また,貸与金の返済等の経済的な負担を抱えることとなりました。
その後,司法修習制度の重要性や貸与制の間題点が強く認識された結果,2017年に新た
な修習給付の制度が導入され,司法修習生は十分でないにせよ,全くの無給で司法修習を受け
なければならない状態はひとまず解消されました。もっとも,無給で司法修習を受けざるを得
なかったいわゆる「谷問世代」に対しては,国による救済措置はいまだ行われないままになっ
ています。
3 いわゆる「谷間世代」は約1万1000人であり,法曹全体の4分の1を占めています。こ
れは単なる個人の資格取得の問題ではなく,「谷間世代」の法曹(裁判官,検察官,弁護士)が,
経済的な負担の懸念なく,司法の担い手として基本的人権を擁護し社会正義を実現すべく存分
に活動できるようにするためにも,「谷聞世代」に対する是正措置が不可欠です。
日本弁護士連合会, 各弁護士会連合会及び各弁護士会によるこれまでの地道な活動により,多
くの国会議員において国による谷間世代に対する是正の必要性に理解を示していただいており,
応援メッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様には感謝の意と敬意を表するところです。
そこで,当会は,国に対し,改めて,早急に「谷間世代」全員に対する一律給付を実現する
よう強く求めます。
2023年(令和5年)3月29日
新潟県県弁護士会
会長 齋藤 貴介