最低賃金の大幅な引上げと地域間格差の是正及び中小零細企業への実効的支援等の実施を求める会長声明
新潟地方最低賃金審議会は、近いうちに、中央最低賃金審議会の厚生労働大臣への答申を踏まえ、
本県の最低賃金改定額を新潟労働局長に答申する。
最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障し、労働条件の改善
を図ることにあるから、最低賃金の額は、労働者が人間らしく、健康で文化的な生活を自ら維持して
いくに足りるものでなければならない。
現在、新潟県の最低賃金は時給931円である。しかし、時給931円という水準は、1日8時間、
週40時間働いたとしても、月収約16万1000円、年収約193万円にしかならず、この金額では、
到底、健康で文化的な生活を営むのは困難である。昨今、食料品や光熱費など生活関連品の価格が
上昇を続け、実質賃金は低下しており、このような状況に鑑みても、労働者の生活を守るためには、
最低賃金の大幅な引上げが必要である。
また、わが国においては最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも重大な問題である。
2023年10月に改訂された最低賃金は、最も高い東京都で時給1113円であるのに対し、
最も低い岩手県は時給893円であり、220円の開きがある。新潟県の最低賃金も、東京都に比べて
182円低く、全国加重平均(1004円)と比べても73円低くなっている。最低賃金の地域間格差は、
地方から都市部への人材流出の一因ともなっており、働く世代の減少で深刻化している地方の人手不足に
追い打ちをかけるなど、切実な課題である。地域経済の維持、活性化のためには、最低賃金の地域間格差を
解消することが急務である。
他方で、最低賃金の大幅な引上げは、特に体力の乏しい中小零細企業の経営に影響を与えることとなる以上、
今後、更に最低賃金を引き上げていくに当たっては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
法律(昭和22年法律第54号)や下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)をこれまで以上に
積極的に運用し、中小零細企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるようにするとともに、
社会保険料の事業主負担分の減免などの中小零細企業への実効的支援策を実現することが不可欠である。
当会は、国に対して、最低賃金の地域間格差の是正及び中小企業・小規模零細事業者に対するさらなる
実効的な支援策等の実施を求めるとともに、新潟地方最低賃金審議会に対して、新潟県の地域別最低賃金の
大幅な引上げを答申すべきことを求める。
2024年(令和6年)6月10日
新潟県弁護士会
会長 中村 崇