001/202212/logo.png@alt

お知らせ

選択的夫婦別姓制度を国会で審議し導入するよう求める会長声明

1.    最高裁は国会での議論促進を求めている
 2021年(令和3年)6月23日,最高裁判所大法廷は,いわゆる第二次選択的夫婦別姓訴訟において,婚姻の際に夫婦同姓を
強制する民法750条及び戸籍法74条1号の各規定は憲法24条に反するものではないとの判断をしました。しかし,同時に,
選択的夫婦別姓制度は「国会で論ぜられ,判断されるべき事柄」であると述べ,国会での具体的な検討・議論を進めるよう
呼びかけています。
 のみならず,第一次訴訟と第二次訴訟を通じ,のべ9名の裁判官は,夫婦同姓を強制する現行法は違憲であると述べ,
さらに,のべ2名の裁判官は,選択的夫婦別姓制度の導入を怠ってきた国会の立法不作為は,もはや立法裁量の範囲を超えて
おり許されるものではないとの意見を述べています。

2.    婚姻前の氏を維持することは、個人の重要な人格的利益に関わることである
 人の氏(姓)名は,ただ単に個人を識別し特定する機能をもつだけでなく,個人を尊重する基礎となり,アイデンティティ
を象徴するという重要な人格的意義をもつもので、その意義は歳月とともに深まりを増していきます。
 このような意義をもつ姓を婚姻の際に変更することは,婚姻前の姓に紐付けされた他者からの信頼や評価を失い,
アイデンティティの喪失感など精神的苦痛を生じさせ得るものです。望まない者にこれを強要することは重大な人格権侵害
であり,通称使用では不十分です。通称使用で足りるという意見は,選択的夫婦別姓制度の本質を理解しない論点のすり替え
にすぎません。

3.    国際法の観点からも早急な是正が必要である
 民法750条の規定は,文面上は「夫又は妻」が改姓するとしており,形式的には平等が保たれているようにも思えます。
しかし,現実に婚姻の際に改姓するのは9割以上が女性であり,多くの女性がこれらの不利益を強いられているという実質的な
不平等が生じています。
 法制審議会は1996年に「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫若しくは妻の氏を称し,又は各自の婚姻前の氏を称する
ものとする。」旨の民法改正案を答申したものの,法改正には至りませんでした。
 このような現実を背景に,国連の女性差別撤廃委員会は,日本政府に対し,2003年,2009年,2016年の3度にわたり,
女性差別撤廃条約(日本は1985年に批准)に明記された「姓を選択する権利」を確保するための適当な措置をとる義務
(16条1項(g))を果たすべく,女性に改姓を強要している現行制度を廃止するよう,繰り返し勧告しています。それでもなお
夫婦同姓を強要する制度を存続している国は,同条約の189の締約国(2020年10月現在)のうち,もはや日本だけです。

4.    国民の期待も高まっている
 これまで夫婦同姓が定着してきた日本でも,選択的夫婦別姓に対する国民の意識には変化が見られ,とくに,これから婚姻を
しようと考える若い世代を中心に,選択的夫婦別姓に対する期待は高まっています。
 2017年(平成29年)12月に内閣府が実施した世論調査(「家族の法制に関する世論調査」)では,選択的夫婦別姓を容認する
との回答が42.5%となり,夫婦は同姓であるべきだとする回答の29.3%を大きく上回っています。特に,10代~40代の女性では
50%以上が選択的夫婦別姓を容認するとの回答をしています。

5.    速やかな導入を
 こうした状況にもかかわらず,国会は, これまで同制度についての具体的な検討や議論をほとんど行ってきませんでした。このような
国会の態度は,立法府の責任を放棄しているものと言わざるを得ません。
 当会は,国会に対し,上記に指摘した各点を重く受け止め,立法府としての責務を果たし,希望する者は婚姻前の姓を保持したまま
婚姻することができる選択的夫婦別姓制度を速やかに国会で審議し導入することを強く求めます。

                                        2021年(令和3年)9月28日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 若 槻  良 宏  


ページトップへ

page top