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お知らせ

低賃金労働者の生活を支えるために最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

 昨年、中央最低賃金審議会は、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、地域別最低賃金額の引上げ額について目安額の
提示を見送った。これを受けて、各地の審議会も引上げ額を抑制し、新潟県も1円の引上げ(時給831円)にとどまった。
 最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障し、労働条件の改善を図ることにあるから、
最低賃金の額は、労働者が人間らしく、健康で文化的な生活を自ら維持していくに足りるものでなければならない。
しかし、時給831円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約14万4000円、年収約173万円
にしかならず、この額では、到底、健康で文化的な生活を維持していくことはできないと言わざるを得ない。仮に
時給1000円であったとしても、年収約208万円であり、ワーキングプアと呼ばれる水準(200万円)をわずかに
超える程度にしかならない。労働者の生活を守るためには、コロナ禍にあっても、最低賃金額の引上げを後退させてはならない。
 最低賃金の地域間格差が依然として大きく、しかも拡大していることも重大な問題である。2020年の最低賃金は、最も
高い東京都で時給1013円であるのに対し、最も低い7県は時給792円であり、221円の開きがある。新潟県の最低賃金も、
東京都に比べて182円低く、全国平均(902円)と比べても71円低くなっている。最近の調査によれば、地域別最低賃金を
決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費が、都市部と地方の間で、ほとんど差がないことが明らかになっている以上、
地域別最低賃金制度に合理性は認められない。速やかに全国一律の最低賃金制度を実現すべきである。
 一方で、単なる最低賃金の引上げは、経営体力の乏しい企業の事業継続に重大な支障を生じさせることになるから、最低賃金の
引上げとともに、企業に対する十分な支援策を講じる必要がある。現在、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた
中小企業・小規模事業者に対する助成制度(業務改善助成金)があるが、令和3年度の予算規模は23.1億円であり、支援策
として到底十分とはいえない。最低賃金を引き上げることにより企業の損益や資金繰りが悪化しないように、経営体力の乏しい
企業に対する社会保険料の事業主負担部分の減免などの財政的支援のほか、企業の生産性の向上のための諸施策を集中的に
講じるべきである。
 よって、当会は、国に対して、企業とくに中小企業・小規模事業者に対する支援策を求めるとともに、新潟地方最低賃金審議会
に対して、コロナ禍にあっても低賃金労働者の生活を支えるために、本年度、同審議会が最低賃金の大幅な引上げを答申すべきことを求める。

                                        2021年(令和3年)6月22日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 若 槻  良 宏  


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