辺野古県民投票の結果を尊重することを求める会長声明
1 はじめに
2019年(平成31年)2月24日,沖縄県において「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している
米軍基地建設のための埋立て」の賛否を問う県民投票が行われ,投票率は52.84%,投票総数60万5385票のうち
7割を超える43万4273票が「反対」という結果であった。この「反対」票の数は,玉城デニー知事が昨年の県知事選挙で
獲得した史上最多得票数をも上回る数字であり,辺野古新基地建設に反対する沖縄県民の民意が改めて明確に示されたものといえる。
2 沖縄県民の幸福追求権及び法の下の平等保障の侵害
沖縄県内では,米軍基地に起因する航空機事故や米軍人・軍属等による事件が絶え間なく発生し,軍事訓練や騒音等により,
沖縄県民が安全に平穏に暮らすことを基調とする「幸福追求権(日本国憲法13条)」は,現在も侵害され続けている。
また,沖縄県は,国土面積の約0.6パーセントしかないにもかかわらず,日本全国の米軍専用施設面積の約70.6パーセント
(2017年(平成29年)1月1日現在)という過重な基地負担を負っており,このこと自体が極めて不平等であり差別的である。
辺野古新基地が建設された場合,その耐用年数は100年とも200年とも言われ,また普天間飛行場には無かった幾つもの
新機能が付与されることにより,沖縄の基地負担は,軽減どころか,基地負担の増大,機能の強化,基地の固定化に繋がるものであり,
米軍基地問題の不平等性及び差別的構造を一層拡大させるものといえる。かように過酷な負担を特定の地域の住民にのみ
負わせ続けることは,日本国憲法第14条に定める「法の下の平等」に反するものである。
3 沖縄県民の民意と住民自治の尊重
(1)日本国憲法第92条は,地方自治制度の運営を「地方自治の本旨」に基づいて行われることを保障しており,団体自治と共に,
住民自治,すなわち,地方自治が住民の意思に基づいて行われると言う民主主義的要素としている。前述のとおり,沖縄県民は二度の
県知事選挙及び今回の県民投票において「辺野古新基地建設反対の意思」を繰り返し表明しており,その民意は住民自治の観点からも
最大限に尊重されるべきである。
また,日本国憲法第95条は,一の地方公共団体のみに特別法はその地方公共団体の住民の投票において過半数の同意を得ることを
必要としているが,同法条の趣旨は,地方公共団体の個性の尊重,地方公共団体の平等権の保障,特別法による地方公共団体の自治権の
侵害防止及び地方行政における民意の尊重であり,国が特定の地方公共団体に不利益な事項を定めるときは住民の意思を十分に尊重する
ことにあり,辺野古新基地建設にもあてはまると言える。
よって,辺野古新基地建設反対の沖縄県民の意思は,住民自治の原則及び憲法95条の趣旨に照らし,最大限に尊重されるべきである。
(2)政府は,普天間飛行場の危険除去のためには「辺野古移設が唯一の解決策」であると繰り返し述べている。
しかし,沖縄駐留の海兵隊は,ローテーションにより一年の半分以上は海外で訓練を行っており,その間沖縄を不在にしていること,
海兵隊を運ぶ揚陸艦母港は沖縄県内ではなく他県にあることからすれば,沖縄における海兵隊の駐留が国防上必須であるとの政府の
説明は容易に理解・納得できるものではなく,代替施設が沖縄県内になければならない必然性はなく,「辺野古移設が唯一の解決策」との
政府の説明をそのまま受け入れることはできない。
4 まとめ
政府は,「県民投票の結果を真摯に受け止める」と述べる一方で,辺野古新基地建設を「これ以上先送りできない」等と言って強行する
構えを変えていない。
このような政府の対応は辺野古県民投票の結果に示された民意を顧みないものであって,民主主義を蔑ろにするものである上,沖縄県民の
尊厳を傷つけ,憲法に定められた地方自治の本旨に背くものであり看過することはできない。
当会は,政府が沖縄県民の声に耳を傾け,今回の県民投票の結果を真摯に受け止めて,辺野古沖への土砂投入を直ちに停止し,
辺野古新基地建設について根本的に再考することを求める。
2019年(平成31年)2月26日
新潟県弁護士会
会長 小 泉 一 樹