001/202212/logo.png@alt

お知らせ

少年法の適用年齢引下げに再度反対する会長声明

1 法務省の法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会では、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に
引き下げることの是非及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇策に関する議論が進められています。

2 当会は、2015(平成27)年6月11日に「少年法の『成人』年齢引き下げに反対する会長声明」を、
2017年(平成29年)10月10日に「少年法の適用年齢引下げに改めて反対する会長声明」をそれぞれ発出しており、
①少年犯罪が増加も凶悪化もしていないこと、②現行の少年法の保護主義の理念や科学主義に裏付けられた環境調整機能や矯正教育が
少年の更生に成果を上げていることなどから有効に機能しており改正の必要性が乏しいこと、③少年法の適用年齢の引下げには多くの
問題点があることから反対の立場であることを表明しています。
 また、2018年6月に民法の成年年齢を18歳に引き下げる内容の民法の一部改正法が成立しましたが、飲酒・喫煙・公営ギャンブル
の可能年齢は必ずしも引き下げを要しないと考えられているように、個別の法律の趣旨・目的に沿って適切な年齢を定めるべきであって、
反対の立場であることに変わりはありません。

3 現在、法制審議会の部会においては、18歳・19歳の者を少年法の対象から外して成人として扱う場合に、現在の刑事訴訟法が適用
されることを前提に「新たな処分」を設けるといった方策についても議論されているところです。
 しかし、①少年鑑別所・保護観察所の活用を図ろうとも、現行の家庭裁判所調査官の調査・調整機能に代わり得るものではないこと、
②少年法が未成熟な少年の「健全育成」を目的として再び犯罪を起こさないようにするための処遇である一方で、刑罰を目的とする
刑務所における処遇では限界があることなど、少年法の保護主義に基づく処遇について、刑事政策における刑罰と同列に論じること自体に
矛盾・無理があります。

4 当会では2018(平成30)年9月7日、一般市民の方々を対象に「少年法適用年齢引下げが必要か考えよう」と題する緊急学習会を
開催し、18歳以降に事件(裁判員裁判の対象ではない比較的軽微な事件)を起こし、少年院に入院した元少年にもご参加いただきました。
 元少年からは、「少年院で自分と向き合い、担任の先生などに悩みを話せることもあった」、「少年院でいろいろな勉強をして資格を
取ることで自信もつき、面会に来た家族からも変わったと言われるようになった」等の体験談が述べられ、学習会後、参加者からは
「『少年法適用年齢が引き下げられたら一体どうなるのだろう』と、とても不安な気持ちになりました」というアンケート結果を得るなど、
大きな反響がありました。
 このように、一度躓いてしまったものの、現行少年法の下で教育的働きかけを受けることによって、自分と向き合い立ち直った少年たちが
たくさんいます。そのきめ細やかな教育的働きかけを受けられる道をあえて狭めなければならない理由は、どこにも見当たりません。

5 以上の理由により、当会は少年法の適用年齢引下げに改めて反対する旨を表明し、法務省に対し、結論を決して急がず、現行少年法の
運用に携わってきた現場関係者の声に耳を傾け、冷静な議論をなされることを要望いたします。

                                        2019年(平成31年)1月29日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 小 泉 一 樹  


ページトップへ

page top