001/202212/logo.png@alt

お知らせ

米百俵の精神をもとに「谷間世代」の支援を求める会長声明

1 1870年(明治3年)5月、戊辰戦争に敗れ疲弊し困窮する越後長岡藩に対する救援として「米百俵」が贈られた。
長岡藩の大参事小林虎三郎は、米の分配を求める士族たちを前に、「米を食いつぶして何が残る。将来の長岡の発展は
人にある。」と説き、米百俵を売却して国漢学校の運営資金に充て、優秀な人材を世に送った。これがいわゆる「米百俵」の
故事である。
 当会は、給費制廃止の議論において、「米百俵」の故事に倣い国の財政が厳しいときこそ人材育成に力を注ぐことを
訴えてきた。にもかかわらず、法曹養成制度全体の在り方や制度の根幹に関する議論が十分になされないまま、給費制は
廃止され、新65期から70期の修習生に対しては貸与制がとられた。

2 司法修習生は、将来、裁判官、検察官、弁護士として司法の一翼を担う準国家公務員の立場にあり、その育成は国の責務で
あることから、修習期間中は、修習専念義務が課されるも、他方で、初任裁判官の俸給に準ずる程度の給与が支給されていた。  
 しかし、2011年(平成23年)から、司法制度改革に伴う司法試験合格者の増員、ひいては司法修習生の増員によって
給費制に伴う国費負担の増大を理由に、給費制は廃止された。新65期から70期までの司法修習生は、従来どおり修習専念義務を
課されながら、他方で、自らの生計は国からの借金によって賄わなければならないという(貸与制)、いかにも不合理な修習を
強いられていた。全国の弁護士約4万名余りのうち、新第65期から第70期修習の弁護士は約9000名、当会においても
会員282名のうち63名と、約4分の1を占めている。

3 日弁連の調査によれば、貸与金を受けた新65期から70期の修習生は平均約300万円の貸与金を受けている。
最高裁判所規則によれば貸与金の返済は修習終了後6年目から、10年間の年賦払いで行うことと定められており、
制度初年度の新第65期に修習を受けた者は、本日、第1回目の年賦払期限を迎えた。
 当会による新65期から70期会員を対象に行ったアンケート調査によれば、貸与金の返還義務の負担のために、
業務及び研鑽のための書籍の購入すらためらわれる状況にあるという回答も複数寄せられた。

4 今般、裁判所法の一部改正によって71期修習生から給付金による経済的支援がされることとなったが、新65期から70期までの
司法修習生に対する遡及的給付は認められなかった。新65期から70期はいわゆる「谷間世代」と呼ばれ、単に修習期の違いによって
国から給費・給付金を支給されるか、借金による生活を選択せざるを得ないかが決せられることに不平等・不公平感が存在し、
弁護士自治さえ危ういものとなっている。他方で、71期修習生に対する給付金の支給が実施されるに至ったとはいえ、
基本給付金月額13万5000円、住宅給付金3万円余りと従来の給費制によるものに比較して、修習に専念するにふさわしい金額とは言えない。

5 当会は、米百俵の精神に基づき、国に対し、新65期から70期の全員に対して、貸与金返還の免除、あるいは給費相当額の
遡及的支給等、給費制廃止に対する事後的な救済措置をとることを求める。また、給付金が支給されている第71期の司法修習生、
あるいはそれ以降の修習生に対しても、給費相当額の支給措置を講じることを求める。

                                        2018年(平成30年)7月25日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 小 泉 一 樹  


ページトップへ

page top