民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
第1 声明の趣旨
当会は、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることに反対する。
第2 声明の理由
現在、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることが検討されているが、当会は、以下の理由により、これに反対する。
1 未成年者取消権の喪失による消費者被害の拡大のおそれ
民法の成年年齢が引き下げられた場合の大きな問題点は、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法第5条第2項)を
喪失することにより消費者被害が増加するおそれがあることである。未成年者取消権は、未成年者を取引行為によるリスクから
保護する制度であるとともに、未成年者に違法又は不当な契約締結を勧誘しようとする事業者に対する大きな抑止力にもなっている。
また、18歳、19歳は、進学、就職等の生活環境の変化により、高額の支払いを伴う様々な契約を締結する機会が増える時期であるから、
成年年齢引き下げに先立って、若年者保護のための十分な施策が必要不可欠である。具体的には、被害防止及び救済のための立法措置と
消費者教育の充実が重要であるが、現時点では、これらの施策は未だ不十分な状況である。このような状況下で成年年齢が
引き下げられれば、若年者の消費者被害が拡大することが大いに懸念される。
2 他の法律、制度への影響
民法の成年年齢の引下げは、他の法律、制度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、労働基準法第58条第2項は未成年者
に不利な労働契約の解除を定めているが、成年年齢の引下げにより保護される者の範囲が狭められてしまうことになるなど未成年者を
保護するべく定められた他の各法律に影響を与えることが懸念される。また、養育費の支払終期が事実上18歳まで早められるおそれもある。
3 結論
上記の通り、民法の成年年齢引下げについては、様々な問題があるにも関わらず、これに対する十分な議論や施策がなされていない
現時点において、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることに反対する。
2017年(平成29年)9月26日
新潟県弁護士会
会長 兒 玉 武 雄