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お知らせ

憲法第96条の憲法改正発議要件緩和に反対する会長声明

 昨年12月の総選挙の結果、自由民主党、日本維新の会及びみんなの党の三党は、衆議院において3分の2以上の議席を占めるに至った。
これら三党は、憲法第96条の発議要件を、衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成から過半数の賛成へ緩和しようとしている。しかし、
憲法第96条を改正して、国会の発議要件を緩和することには、以下のとおり重大な問題があるから、当会はこれに強く反対する。
 憲法は、基本的人権を守るために、国家権力の組織を定め、たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても、権力が濫用されるおそれが
あるので、その濫用を防止するために、国家権力に縛りをかける国の基本法である。(立憲主義)
 このように、憲法は国の基本的な在り方を定める最高法規であるから、憲法が改正される場合には、国会での審議において、充実した
十分慎重な議論が尽くされた上で発議がなされることが求められ、法律制定よりも厳しい要件が定められたものである。
 しかるに、国会の発議要件を「3分の2以上」から「過半数」に緩和することは、そのときどきの政権与党が容易に憲法を改正できる
こととなり、基本法たる憲法の安定性を損なうこととなる。
 各国の憲法と比較しても、日本国憲法の改正要件はそれほど厳しいとはいえないし、日本国憲法よりも改正要件が厳しい国もあり、外国の
憲法改正規定を根拠として発議要件の緩和を正当化することはできない。
 憲法学説においても、憲法改正規定の改正は、憲法改正の限界を超えるものとして許されないとする考え方が多数説である。
 小選挙区制を主体とする現行の選挙制度のもとにおいては、多数の国民の支持をえなくても衆参各院で過半数の議席を占めることが可能である。
 また、2007年5月18日に成立した憲法改正手続法(「日本国憲法の改正手続に関する法律」)において、最低投票率の規定が設けられず,
投票総数(賛成票と反対票の合計とし白票等無効票を除く)の過半数の賛成で憲法改正案が成立するとゆるやかに国民投票の要件が定められた
ため、憲法96条の改正により国会の議決要件を衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成から過半数の賛成へと緩和することは、政権与党が
容易に憲法を改正できることとなり、立憲主義の見地から許されないと考える。
 以上のとおり、憲法第96条について提案されている改正案は、国の基本的な在り方を不安定にし、立憲主義と基本的人権尊重の立場に
反するものとしてきわめて問題であり、許されないものと言わなければならない。
 よって、当会は、憲法改正の発議要件を緩和しようとする提案に強く反対する。

                                        2013年(平成25年)6月11日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 味 岡 申 宰  


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