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お知らせ

秘密保全法制定に反対する会長声明

 有識者会議の「秘密保全のための法制の在り方について」(以下「報告書」という。)を受けた政府の検討委員会は、
2011年(平成23年)10月7日、「秘密保全に関する法制の整備について」を決定し、秘密保全に関する法制
(以下「秘密保全法」という。)の法案化を進めることとした。
 秘密保全法は、①国が、重要な情報を「特別秘密」に指定し、②指定した「特別秘密」の取扱者を選定し(適性評価制度)、
③「特別秘密」を漏えい・取得等した者を処罰する法律である。しかし、同法は、国民の知る権利、取材・報道の自由、
プライバシー権など憲法上の人権を侵害する極めて問題のある法律であり、立法の必要性も存在しない。
 当会は、秘密保全法制定には反対であり、法案が国会に提出されないよう強く求めるものである。

1.内容不明確かつ恣意的に決められる「特別秘密」
(1) 報告書によると、秘密保全法で保護される「特別秘密」は、「国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持」の三分野の
いずれかに関わる、秘匿の必要性の高い情報と定義され、何が「特別秘密」に該当するかは、当該情報を扱う行政機関等が
判断するとされている。
(2) しかし、三分野に関する情報は極めて広範囲で、秘匿の必要性という限定も機能しない。そのため、「特別秘密」の意義は
不明確で、明確性の原則(憲法21条1項)及び罪刑法定主義(憲法31条)に違反する。また、行政機関等に都合の悪い情報は、
全て「特別秘密」とされるなど、行政機関等の恣意的な運用の危険性が大きい。

2.「適性評価」の名の下に多くの国民のプライバシーを侵害する
(1) 報告書によると、指定された「特別秘密」を保全するため、誰が当該情報を取り扱うにふさわしいかを判断する制度として、
適性評価制度を導入する。
(2) しかし、同制度は、対象者及びその家族等のプライバシー情報を行政機関等が収集することを認める。対象者及びその家族等の
範囲が広範囲に広がることも併せると、適性評価制度は、不特定多数の国民のプライバシー権(憲法13条)を侵害する。

3.内部告発を抑制し、取材・報道の自由、知る権利を侵害する
(1) 報告書によると、「特別秘密」の外部流出について、秘密漏えい、特定取得行為、教唆(独立教唆含む)・共謀・煽動を処罰する
規定を設けている。
(2) しかし、「特別秘密」の定義は不明確かつ広範囲である上、「特定取得行為」の概念も犯罪に至らない「社会通念上是認できない行為」
としており極めて不明確である。また、共謀・煽動も処罰対象としていること等から、内部告発により国民に重要な情報を公開することを
抑制するとともに、内部告発を働きかける報道機関の取材の自由や報道の自由を侵害し、ひいては国民の知る権利(憲法21条1項)を侵害する。

4.弁護人選任権を侵害する
 秘密保全法違反の被疑事件や被告事件の弁護人が、被疑者・被告人の接した情報について、それが「特別秘密」に該当するか否かを調査
するために関係者から聴き取りを行うことも、秘密保全法違反とされるおそれがある。そうすれば、弁護人の弁護活動は制約され、
被疑者・被告人の弁護人選任権(憲法37条3項)を侵害する。

5.立法の必要性は存在しない
 秘密の保全は、現行の国家公務員法・自衛隊法等による罰則で十分対応できる。過去の秘密漏えい事件も、秘密を漏えいした公務員に対する
起訴猶予処分や、執行猶予付きの有罪判決等の比較的軽い処罰で済んだものがほとんどである。
 そうすると、そもそも厳罰化等の要請はないといえ、秘密保全法を制定する必要性はない。

                                        2012年(平成24年)3月27日
                                           新潟県弁護士会
                                           会長 砂 田 徹 也  


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